日本の野党について

アメリカの大統領は民主党のバイデン氏に決まりそうですね。アメリカは政権交代が頻繁に起こりますが日本は自民党が強いですよね。他の野党は何をしているのでしょう。
アメリカは二大政党制のため頻繁に政権交代が起こります。一方の日本は他の政党が政権を握ったこともありますが、現在の所、自民党が一強の状態です。本日は日本の野党について解説したいと思います。

 

アメリカの大統領選はトランプ氏が訴訟の構えを崩していないため、バイデン氏の正式な次期大統領への就任が決定はしてはいませんが、事実上、バイデン氏の勝利が確実視されています。これに対し、日本では歴史的にも自民党が強くなかなか政権が変わりずらいのが現状です。しかしながら、政治を腐敗させないためにも反対意見を持つ野党の存在も大切です。本日は野党について解説していきたいと思います。

 

以下、目次となります。

立憲民主党とは

旧・立憲民主党と旧・国民民主党などが合流した新「立憲民主党」(合流新党)は、9月15日、都内のホテルで結党大会を開きました。

3年前に旧民進党が分裂して以来、政権交代を視野に入れた衆参150人の野党第1党が誕生しました。旧立憲民主党の枝野幸男代表が代表に選出され、枝野代表は、「次の総選挙で政権の選択肢となり、国民に選んでもらえるよう最大限努力する」と政権奪取への意欲を見せています。

新党の参加議員は衆参150人で、内訳は立憲88人、国民40人、無所属22人。衆院は106人で、民主党が政権交代を果たした09年衆院選の公示前勢力115議席に迫る規模となります。枝野代表は、菅首相の「自助・共助・公助」という考え方に対抗し、「自助や過度な自己責任ではなく、支え合う社会をつくる」という対立軸を打ち出しています。

 

国民民主党とは

前述のとおり、旧国民民主党は旧立憲民主党と合流し、合流新党を立ち上げましたが、これに参加しない旧国民民主党の玉木雄一郎代表等衆参15名も9月15日、新「国民民主党」の設立大会を開きました。

合流新党への不参加は、新党の綱領に改革中道の言葉が入っていないことや、国民民主党の綱領にはない「原発ゼロ」が入っていたことなどが理由として挙げられ、玉木代表は、旧国民民主党の理念政策を引き継ぐ形で新国民民主党を立ち上げています。合流新党とは、同党に旧国民民主党の仲間が行くので、協力できるところは選挙でも国会でも協力してやっていく考えです。

日本維新の会とは

2015年11月に、民主党への合流に前向きな維新の党執行部の方針に反対して、同党を離党した国会議員や首長らによって、結成された国政政党です。大阪府にある地域政党である大坂維新の会を母体とします。結成当初の党名は「おおさか維新の会」でしたが、第24回参議院選挙後の2016年8月23日、「日本維新の会」に党名変更しました。代表は松井一郎大阪市長、共同代表は片山虎之助参院議員が務めています。

主な政策は、憲法改正、議員定数削減、公務員削減、地方分権、大阪都構想の住民投票等です。11月1日に大阪市を廃止して特別区に再編する大阪都構想の是非を問う2度目の住民投票が行われ、約1万7千票の僅差で反対多数となりました。松井一郎代表は、2023年4月の大阪市長の任期満了で政界を引退すると表明しました。大阪都構想は日本維新の会の1丁目1番地の政策だったので、党として求心力を失うのではないかと懸念されています。

その他の野党とは

①日本共産党
日本共産党は,1922年の設立以来長い歴史を持つ政党です。国会議員数は、衆議院12名、参議院13名で合計25名となっています。代表は志位委員長です。

政策は、憲法改正と日米安保体制には一貫して反対の立場であり、安倍内閣の発足以降は安保法制や、沖縄辺野古基地移設問題などで強く反対しています。また原発を廃止し、自然エネルギーを利用するとしています。

②社会民主党
前身の日本社会党から1996年に改称して発足したのが社民党です。かって55年体制では自民党と2大政党制の一翼を担った政党ですが、現在の国会議員数は衆議院2名、参議院2名、合計4名の小勢力となっています。党首は福島瑞穂氏です。

政策は自衛隊縮小、消費税の引き上げに反対、憲法の9条の改正には反対等となっています。

退潮の流れにある社民党にとって、新立憲民主党との合流問題が起こり、当初は合流の方向にありましたが、意見がまとまらず、離党したうえで立憲に加わる合流組と残留組に分かれる分裂状態を招いています。

③NHKから国民を守る党
2013年に、NHK放送のスクランブル化(受信料を払った人だけが視聴)という1つの目的をもった政党として発足しました。

2019年の参院選では、代表の立花孝志氏が国政選出を果たし、現在は衆議院議員1名、参議院議員1名が所属しています。

④れいわ新選組
代表の山本太郎氏が2019年4月に設立した政党です。2019年7月の参院選において、得票率2%を上回り政党要件を満たし、全国比例から2名の当選者(二人とも重度の身体障碍者)を出しました。

政策としては、消費税の廃止、法人税への累進課税導入、原発の即時廃止などを掲げ、参院選では一大旋風を起こしました。

野党が政権を取れない理由

NHKが行った政党支持率調査(11/6~8)によると、自民党36.8%、立憲民主党4.9%、公明党3.6%、日本維新の会1.5%、共産党2.3%、国民民主党o.8%、社民党0.5 %、令和新選組0.5%、NHKから国民を守る党0.1%、支持なし40.0%等となっています。

公明党を除く、立憲民主党からNHKから国民を守る党まで、いわゆる野党は全部足しても10.6%であり、自民党の3割に満たない数値になっています。このように野党がなぜ支持率が低いのか、野党がなぜ政権が取れないのかについて、次のような点が指摘されるところです。

①自民党の強さ
自民党というのは、建設業界、運輸業界、保育業界、医師会、宗教団体、私学団体、商店街組合まで、ありとあらゆる業界団体とつながっているので、政治情勢にある程度変化があっても、常に一定の支持が集まり、いわゆる岩盤支持層として自民党を支えています。

反面、政府が新たな政策を打ち出しても、その関係する団体から反対運動が起これば、政策の実現には困難を伴うことも多いといわれます。

最近の例では、菅政権が推進する行政のオンライン化の一環として、河野行政改革大臣はこれまで行政手続きに必要とされたハンコの大半を廃止する方向で検討を行っています。

この件に関し、印章の産地として知られる山梨県知事が、印章業界関係者や「ハンコ議連」の議員と共に、自民党本部の二階幹事長を訪ね、業界の窮状を訴えました。既得権益の打破、規制改革の推進を打ち出している菅政権にとって、これらの取り扱いについては頭の痛いところだと思いますが、自民党にとっては大切な支持者であり、何らかの対応が図られるものと考えられます。

このように業界団体をベースとして国民の多数の支持を得ていますが、その他にも自民党には政治信条やイデオロギーにこだわらず、幅広い考え方を持つ人材が多くいて、時々の状況に臨機応変に対応していく政策が打ち出せることです。また自民党は、違った意見の人でも、10のうち1でも一致点があれば一緒にやっていけるという力があり、利害関係が激しくぶつかっても、最後は一本化し、党が分裂するようなことはありません。

②野党の脆弱さ
今、野党の問題点は、野党がばらばらになって、互いに足を引っ張り合っており、脆弱な状態が続いているということで、国民が自民党政権に代わる受け皿を探しても、選択する対象が見いだせないことです。世論調査でも、自民党を支持するのは他に適当な政党が見当たらないからという回答が多く見られます。

国会討論を見ていても、与党が議案を強行採決し、これに野党が頑なに拒否を貫くという姿勢は、国民には不毛の議論に映り、野党が何を目指しているのか全く見えてこないといえます。政権与党の政策に反対することで、野党が本当に支持を得ようと思ったら、政策のダメなところを、有権者に響くような形で追及することが必要です。

野党の戦術として、「内閣不信任案の提出」というものがあります。多数決で負ける野党が、最後の切り札として行うものですが、内閣不信任案というのは「伝家の宝刀」であって、伝家の宝刀は抜かないことに威力があります。意味なく連発すれば、その重みはなくなり、出される自民党も否決さえすれば、議案は成立するという軽い扱いになってしまいます。内閣不信任案の本来の姿は、「これを出されるといよいよ政権は追い込まれる」という状況の時に、これを有効に使って交渉するものです。

また、安倍政権下で国有地払い下げに係る財務省理財局による前代未聞の公文書改ざんが起こりました。これは森友問題といわれますが、もし強い野党が存在し、政権交代の可能性があるような状況だったら、公文書改ざんなどといった事態は起こり得なかったといえます。

官僚たちは、この先ずっと自民党政権が代わることはないだろうと思っているから、命を懸けて安倍政権に尽くすということが起こります。政権のいうことを聞かないと自分の将来に大きな影響があると考えるからです。弱い野党のために、官僚に足元を見られたということが言えます。

③権力への執着心の欠如
2009年8月、民主党が衆議院選挙最多の308議席を獲得して自民党に圧勝し、政権交代が実現しました。鳩山政権直後の内閣支持率は72%で、国民の期待は大きなものでしたが、沖縄のアメリカ軍普天間基地移転問題で、「最低でも県外」と主張。その進展がないままに県外への移転を断念したために、急速に求心力を失い、就任9カ月で辞任しました。

その後菅直人首相に引き継がれましたが、就任早々消費税10%に言及して夏の参議院選挙に大敗し、さらに2011年3月東日本大震災が発生し、菅首相の初動対応に批判が集まり、2年続けて辞任に追い込まれました。

2012年7月、消費税の引き上げに反対し、小沢一郎氏等国会議員50人が民主党を集団離党したことが決定的となり、2012年12月の衆議院選挙で自民党に政権を奪われました。

このような民主党の政権運営の拙劣さで、民主党の政権は3年3か月で終了し、国民の中に「民主党政権はひどかった」という意識が植えつけられることとなり、安倍政権の長期政権へつながったといえます。

このように民主党政権を短命に終わらせたのは、「政権を維持し続ける」という政権に対する貪欲さ、権力に対する「執着心」が欠如していたということだと思います。

これに対し、自民党がなぜ一つにまとまっているのか、それは権力を握るためだといわれます。かって自民党が政権を失ったとき、なんと長年の宿敵ともいえる社会党に総理大臣のイスを用意して連立を持ち掛け、村山政権を誕生させました。野党に転落してもバラバラになることなく、なりふり構わず政権復帰を果たしたことは驚くべきことでした。

野党の政権取りは可能か?

①新たな野党像
立憲民主党のところでも述べましたが、先般9月15日、旧立憲民主党と旧国民主党、無所属議員らが合流して衆参150人規模の新立憲民主党(合流新党)が結成されました。

初代代表に枝野幸男氏が選ばれ、党名も党首も維持されたことは、「結局は旧民主党の再結集」で従来の民主党と何ら変わらないと冷ややかに見る向きもあります。

しかしながら、今回の合流新党は、従来とは異なる新たな野党の誕生を期待させるものがあります。1990年に小選挙区比例代表並立制が導入されましたが、ここで求められたのは「保守二代政党論」で、新しい野党第一党は「保守二大政党の一翼を担う」ということから「政権対応能力」が問われ、野党は政府案に対し対案を用意するということが、主たる目的と考えられてきました。

ところが合流新党は、これまで長く続いた従来の野党像を大きく転換させるという可能性を持っています。その転換とは、従来の「提案型政党」から「提案の対立軸を示す政党」に変わっていることです。それは「支え合う社会をつくる」という自民党とは異なる新たな対立軸を示し、明確な対立軸を持つ二大政治勢力が、国政を競い合うという形を作り、国民が求める政権選択肢を提供しうる党になったということです。

合流新党の新たな意義は、国会論戦などを通じて立場の違いを十分に示したうえで、その主張の先に、現政権と異なる「その先の未来」の社会像をしっかりと描くことが求められます。

②野党の大きな塊をつくる
上述の合流新党の結成は、強い野党をつくる第一歩です。旧国民民主党の一部は今回の合流に参加せず、玉木雄一郎代表のもとに新国民民主党を結成しましたが、合流新党の枝野代表は、今まで通りの連携を呼びかけたいとし、国会や選挙などで協力を求める考えを示しています。

現在の選挙情勢を分析すると、2009年以降、過去4回の衆議院選挙における得票率では、自民党の得票率はいずれも25%程度と横ばいで、支持を伸ばしていないにもかかわらず勝ち続け、6割の議席を握っています。その理由は、小選挙区制の中で、野党が戦略的に選挙協力できず、議席が取れなかったといわれています。

しかし、全国289の選挙区のうち、現在でも59の選挙区で勝っており、野党の票がまとまれば143の議席が取れるという試算があり、保革伯仲の状態が実現できます。そのため、共産党や社民党、令和新選組党等との連携も重要になってきます。

今の政治に対して不満や不信を抱きながらも「諦め」を感じている人たちに、「政治は変えられる」ことを理解してもらい、政権選択によって未来に希望を持てるような社会をつくることが今の政治に求められています。

③支持基盤の強化
もし現在の状況下で強い野党を作ろうとするなら、どの党が軸になるにしても、野党が一つにまとまっていくしかありません。

もちろん、何よりも地方議員を含めた強固な組織力がある自民党に、本当に対抗できる野党を作るのは、並大抵のことではありません。しかし、今の選挙制度のもとでは、与党がいったん崩れれば、一瞬の「風」で政権交代が起きうるのも厳然たる事実です。

野党議員で現在もしっかりと生き残っている政治家たちは、党の力だけに頼らず、自分で支持層を確保する力に長けているし、その努力を怠らないものです。

野党の有力なある政治家は、自分の選挙区を何百にも区分けして、細かく後援会組織を設けているといわれます。数百もの後援会組織としっかり付き合っていくというのは、相当の努力と人徳がなければできない離れ業だと思います。このように選挙で勝つには、支持基盤を固める努力は欠かせません。

但し、形式的・儀礼的な盆踊りや葬式回りは意味がなく、住民集会やタウンミーティングなどあらゆる形で有権者としっかりコミュニケーションをとらなければなりません。

業界団体とがっちりタッグを組んでいる自民党と同じ手法を取っていれば、一般有権者からの支持は集まりません。業界団体などに属していない一般の有権者は、本当に地域を変えたい、日本をよくしたい、次世代のために貢献したいという人が多く、こうした一般有権者を中心に地道に政治活動をこなしながら固い支持層を作り上げていくことが求められます。

④意思決定の透明化
党の方針を決めるのに、その決定プロセスを公開すれば本気度が伝わります。自民党にはない新たな意思決定方法として、有権者の支持を集めることができるかもしれません。

安倍政権下で、「忖度」(そんたく)という言葉が流行り、流行語大賞にノミネートされる程でしたが、森友・加計問題や桜を見る会など国民の関心が高まる中で、情報が開示されず、政策決定のプロセスが格段に不透明感を増していました。

本来政治主導とは、国家戦略性に乏しく、透明性に欠けていた日本の政治を、国民の代表である政治家がリードすることで、抜本的に改革しようという、純粋な志のもとで実行されたものでしたが、いつの間にか政治主導が官邸主導にすり替わり、総理という個人の意向で集められた限られたメンバーが、情報公開を行わないまま、事実上政策を決定し、官僚の主要人事も掌握する中で、お手盛りや忖度による政策が遂行される事態を招いていました。

野党がこうした状況に手をこまねくことなく、野党として「政策決定プロセスの透明性を高め、各段階で議論の場を確保し、その経過と結果を公開する」という野党の姿勢が定着すれば、野党に対する信頼度も格段に上がり、政権交代につながることも現実味を帯びてきます。

 

この記事でのポイント

・立憲民主党は「自助や過度な自己責任ではなく、支え合う社会をつくる」という対立軸を打ち出している。
・国民民主党の綱領にはない「原発ゼロ」が入っていたことなどを理由として挙げ、玉木代表は、旧国民民主党の理念政策を引き継ぐ形で新国民民主党を立ち上げている。
・日本維新の会の主な政策は、憲法改正、議員定数削減、公務員削減、地方分権、大阪都構想等であるが、大阪都構想は選挙での信任を得られず、松井代表の引退とともに求心力が落ちる可能性がある。
・野党が政権を取れないのには①自民党の強さ、②野党の脆弱さ、③権力への執着心の欠如が挙げられる
・野党が政権を取るには①新たな野党像、②野党の大きな塊をつくる、③支持基盤の強化、④意思決定の透明化がカギとなる。