認知症高齢者が起こした交通事故について

うちの父が認知症の疑いがあるんですよ。物忘れが激しくて。車の免許を返納してほしいんだけど。
認知症の高齢者による事故はマスコミにも大きく取り上げられて社会問題になっています。免許を返納すれば良いでしょうが、なかなか家族の言う事も聞いてくれないことも多いですよね。

 

最近、高齢化に伴う認知症によって引き起こされる様々な社会問題が発生しています。テレビでも放映されることも多いため家族は気が気でない場合も多いはずです。この記事では、認知症高齢者の交通事故の対策について解説していきたいと思います。

 

以下、目次となります。

2007年に認知症で徘徊中の男性の事例

2007年に認知症で徘徊中の男性が列車にはねられて死亡した事故をめぐって、
JR東海が男性の家族が監督義務を怠ったとして、約720万円の損害賠償を求めた事例がありました。

一審、二審ともJR東海側の主張を概ね認めましたが、

最高裁では
「家族関係のみをもって監督義務者には該当しない」
「本件に関しては監督義務を引き受けていたとみるべき特段の事情があったとは言えない」
としてJR東海側の請求を退けました。

自賠責保険、民間の自動車保険

しかし、家族関係の関わり方次第で、必ずしも、家族が監督義務を負わないとは限りません。

認知症の家族を抱える家庭にとっては、いつ災難が降りかかってくるか、大変な問題です。

ⅰ 自賠責保険
一般に、自賠責保険は、被害者保護のために最低限度の補償を行う強制保険であり、認知症の高齢者が起こした対人賠償事故であっても、補償の対象になります。

ⅱ 民間の自動車保険
一方、民間の任意の自動車保険では、重度の認知症を患った高齢者が事故を起こした場合、責任無能力者ととされ、自動車保険からの支払いが行われないか賠償保険金が減額される恐れがあります。

この場合、被害者側は、監督義務者であるその親族や後見人等に損害賠償請求を行う可能性が出てきます。

自動車保険・火災保険等に付帯する個人賠償責任保険(特約)

そのため、このようなリスクへの対応から、自動車保険・火災保険等に付帯する
個人賠償責任保険(特約)として、

認知症の人が事故で損害を与えた場合に監督義務者が負担する賠償責任を補償しやすくする商品を販売する保険会社が出てきていることは注目されます。

保険の対象になれば、家族の負担も軽減されます。皆さんもぜひ検討されてはいかがですか。

  • この記事でのポイント

    ・自賠責保険は、認知症の高齢者が起こした対人賠償事故であっても、補償の対象になる。
    ・民間の任意の自動車保険では、責任無能力者ととされ、自動車保険からの支払いが行われないか賠償保険金が減額される恐れがある。
    ・認知症の人が事故で損害を与えた場合に監督義務者が負担する賠償責任を補償しやすくする商品を販売する保険会社が出てきている。