親の保証人には極力なるな!?

親が亡くなったのですが、保証人になっていたので債務の支払いを迫られています。なんとかならないのでしょうか?
高齢の親御さんを持つと施設入所等も検討しないといけません。親の資金状況では親が亡くなった後も保証人に支払いを迫られるので注意が必要です。

 

親が亡くなると遺産という形でその相続人に資産は引き継がれます。相続という言葉を聞くとプラスが多いイメージですが、同時に負債も引き継ぐ点も注意しないといけません。相続放棄という方法でその負債を放棄することも可能ですが、保証人になってしまうと親が亡くなったとしても保証人の立場を放棄することが出来ない点に注意が必要です。

 

以下、目次となります。

 

人生で不意にやってくる親の死で人生が変わる場合も

私たちは毎日の生活を生活費を稼ぐために働き、その中でやり繰りをして、一部お金を貯めたり、足りない部分を借金したりして生活を成り立たせている方が大部分です。

宝くじやギャンブルでお金を増やす方も中にはいらっしゃるでしょうが、宝くじやギャンブルは売上の一部を開催している側が無条件で取り、残った額を配分する形となっているので、購入者側が計算上は不利になるシステムになっています。

よって、日常生活を必死に頑張っていたとしても、給与が増額されないのであれば未来も今の延長線上で成り立つことを何となくわかった中で、子の支出や自身の病院代など出費を考えながらライフデザインを立てるととが望まれます。

そんな変わり映えのしない毎日の中で、人生を大きく変えるターニングポイントになることがあります。

親の死です。

もちろん、肉親の死は悲しみのどん底を味わう為、精神的にもご自身の人生を変える機会にはなるでしょうが、お金の面のみでお話しさせていただくと、相続の問題が出てくるからです。

 

子どもには確実に相続が引き継がれる

親が死去するとその財産は原則は法定相続分によって引き継がれます。

『原則』

とお伝えしたのは、遺言の問題や相続人の話し合いの結果、その額が決められることもあるからです。

話し合いのことを「遺産分割協議」と言います。

この協議においては、自分の財産をAさんにお譲りします。という事を伝えても問題ありません。

話し合いが問題なく進めば、その話し合いで決まった相続分で相続することは可能です。

ただし、相続税が発生するのでその辺りは注意が必要です。

仮に遺言で一部のもののみに相続する。となっていた場合はどうなるでしょう?

この場合、一見、この遺言に効果が認められた場合に、他の相続人は一銭も得られないような印象を持つこともあるかもしれません。

ところが、配偶者、子(代襲相続人を含む)、直系尊属(父母、祖父母)であれば「遺留分」という最低保障額のような相続分を請求することが可能です。

「遺留分」は配偶者および子の場合は法定相続分の1/2となっています。

 

例1)夫が亡くなり、相続権者が妻と子2人。遺産2,000万円。
妻の相続分は遺産の1/21,000万円
子1人あたりの相続分は遺産の1/4500万円ずつ

例2)夫が亡くなり、全財産を愛人Bに相続するという遺言が有効とされた場合
妻の遺留分は法定相続分の1/2(遺産の1/4):500万円
子1人あたりの遺留分は法定相続分の1/2(遺産の1/8):250万円ずつ
愛人Bの遺産:1,000万円

親の借金も相続される

親の遺産はプラス分のみでなく、マイナス分も相続されます。

そうです。親が背負っていた借金も上記に割合に従って相続されることとなります。

ただし、プラス分の相続がマイナス分よりも多ければ問題ありませんよね。例えば受けた相続額が500万円であり、自分が負担しないといけないマイナス分が100万円であれば心配することはないかと思います。

受けた500万円の相続分から100万円の債務を返済し、残りの400万円を自分の財産にすることができるからです。

大変な状況になるのは逆の場合です。

せっかく500万円の相続財産を自身が受け告げるにも関わらず、自分の負担する債務が1,000万円であればどうでしょう?計算上は500万円損することとなります。

親が亡くなれば普通は悲しみにくれます。

しかし、債務がありその負担を自分に強いられるのであれば、親の死が逆に憎しみに変わるかもしれません。

自分の借金ぐらい自分で支払ってからあの世に行ってもらいたい。冷たい言い方かもですが、そう思う人もきっと少なくないことでしょう。

 

相続放棄と言う選択肢!

それでは、親が背負って支払いが終わっていない債務は相続人が絶対に支払わないといけないのでしょうか?

その悩みを解決してくれるのが、

『相続放棄』

という選択肢です。

相続放棄とは、自分の相続する権利をプラス分もマイナス分も含めて放棄します。つまり、いっさいがっさい債務は受け継ぎませんと宣言することです。

この宣言をすれば、あなた自身の相続権はもちろん、あなたの子どもに行くべき代襲相続権もこの方の死によるものであれば放棄されます。

よって、債務があると分かり、その額が財産や資産以上に多いと言うことがわかれば、相続放棄をすることが最も一般的な解決策になっています。

専門家に相談に行ったとしても、相続放棄を勧められることでしょう。

また、限定承認という相続方法もあります。プラスマイナスが分かりずらい場合は、プラスの範囲内で債務を返済しますが、それ以上であれば放棄します。と宣言するものです。場合によっては限定承認の方が良い場合も出てくると思われますが、まずは放棄できる制度があることを頭に入れておいてください。

ここで、注意すべきことは相続放棄は

「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」(民法915条)

3ヵ月以内に行う必要があることを頭にしっかりと入れておきましょう。

 

保証人の地位は引き継がれる!

これまでの話より、みなさんはプラスの相続があれば、そのまま協議をするか法定相続分、遺留分と言う形で引き継ぎ、マイナスになりそうであれば、相続放棄や限定承認と言う手法で逃れられるかをお分かりいただけたことでしょう。

ただ、1点だけ気を付けないといけないのは、親の保証人になっていた場合です。

親が何かしらお金を借りるためや施設入所に際し、安易に保証人になってしまうと大変な事になりかねません。

保証人は相続とは全く違う話です。

親が亡くなっても保証人の地位はそのまま引き継がれるのです。

契約者が亡くなれば、保証人の地位が無くなるかと言えば、そうではないのです。

保証人が被害を被るのは契約者がしっかりとした債務返済を完了していない場合です。

この場合は保証人に支払いの請求が来ることとなります。

借金の契約は基本的には、債務を返済するか、時効もしくは自己破産を行わない限りは継続します。

もちろん、債務の契約者が亡くなれば請求する人がいなくなりますし、その契約者が姿を消せばお金を貸した方が損をすることとなります。

その場合に保証人と言うものを設けて、契約者本人に関わらず債務を返済できるものに代理の支払いを要求するものとなります。

契約者が死去してしまえば、請求できるのは保証人のみとなるので保証人になってしまえば請求が契約者の代わりに来てしまうのです。

日本の契約の多くは保証人を連帯保証人としています。連帯保証人には催告の抗弁権や検索の抗弁権がないなど、契約者が生存していたとしても逃亡していたとしても保証人にとっては負担の多いものとなっているため、より注意が必要です。

親亡き後の財産と言うのは、親の最後の子どもへの贈り物だと思われます。

しかし、年金額が目減りしている昨今。親の金銭事情も厳しく借金をしてしまっている方もいらっしゃることでしょう。

子としては、親に借金をさせないような注意喚起も必要ですが、まずはご自身の親亡き後の生活を守るためにも保証人には極力ならない!と言うことを頭にしっかり入れて、親の老後を見守っていってあげることも大切だと思われます。

こちらでも解説されていますので、興味のある方はご確認ください。

この記事でのポイント

・親が死去するとその財産は原則は法定相続分によって引き継がれる。
・親が背負っていた借金も相続する割合に従って相続されることとなる。
『相続放棄』とは、自分の相続する権利をプラス分もマイナス分も含めて放棄します。
『相続放棄』3ヵ月以内に行う必要がある。
・限定承認とは、プラスの範囲内で債務を返済すると宣言するもの。
・契約者が亡くなっても保証人の地位はそのまま引き継がれる
・契約者がしっかりとした債務返済を完了していない場合は債務返済は継続する。
親の保証人になった場合、『相続放棄』や限定承認が利用できない。