以下、目次となります。
医療保険の必要論について
A 必要論
ⅰ 自己負担額が家計を圧迫する場合
…万一の場合の、医療費が支払えないことへの備えです。
ⅱ 働けない期間の生活費に備えたい場合
…国民健康保険など、傷病手当金の給付がない公的医療保険に加入している人の場合、働けない期間の生活費をどうするかという問題への備えです。
ⅲ 先進医療、自由診療に備えたい場合
…高度な医療技術のうち、厚生労働大臣が認めた先進医療は、公的医療保険の対象とならず、全額自己負担となります。また、自由診療とは、患者と医療機関が個別に契約して行われる診療で、公的医療保険の対象になりませんが、民間医療保険にはこれらを保障するものがあります。
医療保険の不要論について
B 不要論
ⅰ 医療保険料と貯金のどちらが有利かという考え方
…仮に医療保険料を月に5,000円払い込んだとして、10年払い続けていれば、60万円の払い込みとなります。公益財団法人「生命保険文化センター」によれば、入院時の自己負担額の平均は、20万8000円となっており、この自己負担額を医療保険でまかなったとしても、払い込んだ保険料の方が、3倍近いも多い金額となります。
また、同じ文化センターの調査で、過去5年間の自分自身のケガや病気による「入院経験あり」の割合は13.7%となっています。実際に保険金が支払われる確率は1割強となっており、支払う保険料を上回る保険金が給付されることは少ないといえます。したがって、その保険料に相当する部分を貯金しておき、ケガや病気に備えたほうがいいという考え方です。
ⅱ 高額療養費制度
…これは1か月かかった医療費の自己負担が高額になった場合、一定の自己負担限度額を超えた分が後で払い戻されるというものです。一定の自己負担限度額とは年収とか年齢等にもよりますが、8~9万円となっています。ただし、病院に入院した場合の食事代や差額ベッド代等は含まれません。
ⅲ 傷病手当金
…会社勤めの人が加入している健康保険は、一定の条件(※)を満たすと、最長1年半にわたって、「傷病手当金」が支給されます。もらえるのは1日当たり、標準報酬日額の3分の2相当額です。国民健康保険の場合は法定給付がないため、支給されません。
一定の条件とは、病気やケガで会社を休んだ日が連続して4日以上、原則給与の支払いがない等です。
ⅳ その他企業内保障等
…健康保険組合などから高額療養費の「付加給付」があり、自己負担の上限金額がさらに安く済む場合もあります。その他傷病手当金の期間の延長や金額の上乗せをしてくれる企業や長期療養見舞金や傷病見舞金とかもらえる労働組合等もありますので、よく調べる必要があります。
医療保険は入った方がいいの?
このように医療保険については、意見が分かれているところですが、平成30年度生命保険センターの調査では、直近に加入した保険の加入目的としては、医療費や入院費のためという回答が57.1%、万一の時の家族の生活保障のためが49.5%と、医療保険は生命保険以上に重要と考えている人が多いという結果が出ています。
参考意見としては、十分な貯蓄額がなく、勤務先の福利厚生等も十分でないような場合は、万一の場合に備えて医療保険に加入しておくことが望ましいし、ある程度の貯蓄額があり、
医療費支出が発生しても家計に響かないような家庭では、医療保険への加入は見合わせることもありかなと考えます。
- この記事でのポイント
・医療保険には必要論と不要論がある。
・自己負担が増額になった場合には、家計の圧迫を防ぐことができる。
・貯金した場合と優位性を考えないと、結果的に損する可能性あり。
・勤務先の福利厚生が不十分などの場合は必要だが、ある程度の貯蓄がある家庭は見合わせることも選択肢の一つ。