行為能力を知って未成年者や認知症患者を守る!

友達の子どもが変な大人から多額の商品を買わされたんです。これって取り消せますよね?
お子さんの年齢が大事です。年齢によっては取り消すことも可能になります。

 

私たちの生活の中で人に騙されるということがあります。この時に間違って行った契約を第三者がその人の能力の有無によって取り消すことができたらいいですよね。実はそのような制度が存在します。誰に対しても行えるものではなく、条件がそろう必要があります。どう言う場合に取消すことが可能なのか。本記事で説明したいと思います。

 

以下、目次となります。

未成年者がした契約等の法律行為は取り消すことが出来る?

結論から言うと言うと未成年が交わした契約は取り消すことができます。

これは是非頭の片隅に入れておいて欲しいことです。

子がいる親であれば、子が良からぬ契約をしてもそれを法的に取り消すことが可能とわかれば不安も解消されると思います。

未成年者自身が行った契約であれば、取消せるのは未成年本人でも保護者である親でも可能と言う点が重要です。

未成年者に対しては、誰しもにあてはまることですので例外があるわけではありません。

それでは、なぜ未成年者の契約等の法律行為は取り消すことができるのでしょうか?

それは、

未成年者=制限行為能力者

であるからです。つまり、契約のような法律行為を行った者が制限行為能力者であれば、法定代理人の同意を得ないで行った法律行為は取り消すことが可能なのです。

取り消すとは遡ってその契約がなかったものになります。

そうなると売った方もいつ取り消されるかわからないので不安です。そもそも、その契約が無効かと言われたら、取り消さない限り有効です。売り手側はその契約を確約するには代理人等に追認を求めなければなりません

もちろん、この取消権には時効があることを知っておくことも重要です。

取消権は追認をすることができる時から5年間行使しないときは時効によって消滅し、法律行為の時から20年を経過したときも時効によって消滅します。

未成年者が保護されるのは、消費者として経験が浅く、十分な判断能力を持っていないとされるからです。つまり、契約等の法律行為で判断能力が不十分な未成年が不利益を被らないように法律で保護されているというわけです。

未成年者の取消権は、未成年者を保護するためのものであり、未成年者の消費者被害を抑止する役割を果たしています。

未成年者への取消権は、親権者や(未成年)後見人には認められており、未成年が一人でした契約を取り消すことができますし、
もちろん、未成年本人が自分で取り消すことも可能です。
ただし、2022年4月1日から民法上の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。成人になる(成年に達する)と、保護者の同意なしに契約などができるようになり、これまで未成年者取消権が認められていた18歳、19歳の方は、未成年者取消権が認められなる点にも注意が必要です。

制限行為能力者とは?

未成年者が行った契約等の法律行為に取消権が与えられるのはなぜかと言うと、上述した

未成年者=制限行為能力者

にあたるからです。

字のまま考えれば行為能力が制限された者になります。

すなわち、行為能力がどのようなものかを理解すれば制限行為能力者についても理解できそうですね。

行為能力とはこのように定義されています。

「行為能力」とは、法律行為を単独で確定的に有効に行うことのできる法律上の地位あるいは資格のこと。

簡単に言うと、契約などの法律行為を一人で間違えることなく行うことができる能力のことです。

未成年者に行為能力が与えられていないのは社会経験が少なく、社会の常識、非常識等の区別が年齢的にまだ明確になっていない可能性が高いためです。

このような若者に行為能力を与えてしまうと、間違った契約を大人に騙されて行ってしまう可能性があります。

その時に本人が「ちょっとタンマ!今の契約やっぱなしで!』と言うことを認めています。

本人でなくても例えば親が「その契約は破棄してください!」と言う権利も認めています。

成年であればこうはいきません。クーリングオフなどの法的に認められたもの以外は原則取り消すことはできません。

子にとっては良い面ばかりではありません。行為能力が制限されているため、一人で間違えなく法律行為が行える者とみなされていないからです。

例えば、こっそりと高額の機材を買ってきても、その契約は完全に有効なものになっていません。店の人が親に追認を求めた際に親が「NO!」と言えば、契約は不成立です。高額の機器は返還を余儀なくされるということになるわけです。

みなさんに覚えておいて欲しいことは未成年であれば、親であれ本人であれ契約は取り消せます。騙されて怪しいアダルトな動画を販売されそうになっても、毅然とした態度でNO!と伝えることでその契約は反故になるのです。

認知症患者は制限行為能力者?

それでは高齢者の中で認知機能に障がいを持つことになった認知症患者は制限行為能力者と言えるでしょうか?

多くの勘違いはこの答えを安易にYESと回答してしまうことです。

実は認知症患者であっても制限行為能力者とはすぐには認められないのです。

えっ?と驚かれた方も多いでしょう。いやいや、調べると認知症患者は制限行為能力者って書かれているじゃん!と言われるかもしれません。

しかし、ここが少し難しいところで、

未成年者から認知症患者に変わると少しわけが違ってくるのです。

認知症患者=制限行為能力者とは必ずしも言えない。

からです。

祖父母や親が認知症にかかり、高額のツボを買わされたとします。

子が怒り、買わせた業者に、取消を迫っても実はこの状態では契約は取り消せないのです(クーリングオフは除く)。

未成年者であれば、親でも本人でも取り消せます。

しかし、認知症患者の場合はその診断があるだけでは子も本人も契約を取り消すことはできません。

それでは、認知症患者は制限行為能力者ではないのでしょうか?

認知症患者は重度になれば子の顔や名前も忘れます。一見、未成年より行為能力はないように思われます。

もちろん、このような患者は制限行為能力者となり得る可能性が高いです。

しかし、あくまでもこの時点では、制限行為能力者となり得る可能性が高いとしか言えないのです。

矛盾していると思うかもそしれないですね。

なぜでしょうか?

実は、医者の認知症の診断のみでは認知症患者を制限行為能力者とみなしてもらえないのです。

あるものが欠けているからです。

それは成年後見の申立てを家庭裁判所に行い、後見人と呼ばれる(場合によっては、保佐人、補助人)代理人をつける必要があるからです。

後見人のついた認知症患者=制限行為能力者

となるからなのです。

少しややこしいですよね。仮にみなさんの祖父母や両親が認知症になっても子のみんさんに取消権は付与されません。

成年後見の申立てとは、本人の代理人を家庭裁判所に選んでもらうことに相当します。

家族がなることは稀で、原則は弁護士、司法書士、社会福祉士と呼ばれる専門職が任命されることがほとんどです。

ようは赤の他人が家族内に入り込んでくることにもなります。

なぜかと言うと、金銭を預かることになるので身内がやると本人のためにならない不正が行われる可能性が否定できないからです。

また、家族内のトラブルがありそうなら弁護士、不動産があれば司法書士、生活全般に問題があれば社会福祉士など、各専門性が要求される場合も多く他人である専門家に委ねた方が本人にとって安心でもあるからです。

弁護士のような社会的地位の高い法律の専門家だから良しとする。という考え方もありますが、当然、報酬を毎月払うという金銭的リスクも覚悟する必要はあります。

さらに、この後見制度、いったん後見人がつくと、もう結構です!とは言えないのがこの制度の特徴でもあります。なので、ずっと報酬は支払われることとなります。悩ましいですよね。

ただ、この制度以外に認知症患者を悪徳業者から守る術がないのが現実です。国としても成年後見制度を推し進めている流れもあります。

また、家族が後見人になりたければ、本人が認知症になる前に自身で家族を指名するような任意後見制度という制度を活用することもできます。

不安であれば、お住まいの地区の地域包括支援センターと呼ばれる機関へまずは相談するのも良いでしょう。そこには概ね成年後見制度を推進する社会福祉士と呼ばれる専門職がいるので良いアドバイスをもらえると思われます。

前述通り費用面も含め利用には慎重にならざるを得ないと考える人もいるでしょうが、本人の生活を守るためには現在の日本では推奨されている制度です。

未成年者を親が守るように、オレオレ詐欺のような消費者被害から認知症患者を守るには、後見人の申立てをして代理人を立てる必要がある。ということを覚えておいていただけたらと思います。

こちらでも解説していますのでご参考ください。


この記事でのポイント

・未成年が交わした契約は取り消すことができる。
取り消すとは遡ってその契約がなかったものになる。
未成年者=制限行為能力者
・「行為能力」とは、法律行為を単独で確定的に有効に行うことのできる法律上の地位あるいは資格のこと。
・未成年者の契約であれば毅然とした態度でNO!と伝えることでその契約は反故にされる。
認知症患者=制限行為能力者とは必ずしも言えない。
後見人のついた認知症患者=制限行為能力者
・成年後見の申立てとは、本人の代理人を家庭裁判所に選んでもらうことに相当する。
・認知症患者をオレオレ詐欺のような消費者被害から守るには、後見人の申立てをして代理人を立てることが日本では推奨されている。