養子縁組と里親制度

親の虐待が社会問題になっていますけど、私たちがしてあがられることはあるのですか?
虐待は子どもの成長において大きな影響を与えます。虐待を防止する方法を提言することはできませんが、他のアプローチで考えてみたいと思います。

 

近年、親の虐待が社会問題となり、虐待によって亡くなった子の報道なども頻繁に行われています。また、日本では、生みの親のもとで育つことができない子も多いのも現実です。こういった子供達の状況を変える方法として、この記事では、養子縁組と里親制度について解説していきたいと思います。

 

以下、目次となります。

里親制度

親の虐待で子供が亡くなる事件が起こり、「もうおねがいゆるして」と亡くなった子がノートに残している言葉が、日本中に大きな衝撃を与えました。

わが国では、生みの親のもとで育つことができない子供たちは、約46,000人いると言われていますが、その約85%が乳児院児童養護施設で暮らしています。

養子縁組と里親制度は保護を必要としている子供に、家庭での養育を提供するための制度ですが、制度には次のような違いがあります。

「里親制度」は、育てられない親の代わりに一時的に家庭内で子供を預かって養育する制度で、里親と子どもに法的な親子関係はなく、実親が親権をもっています。

里親には、里親手当養育費が自治体から支給されます。

養子縁組

「養子縁組」は民法に基づいて法的な親子関係を成立させる制度であり、養親が子の親権を持つことになります。

養子縁組が成立した家庭には、自治体などからの金銭的な支援はありません。

「養子縁組」には、特別養子縁組普通養子縁組の2種類あります。

「特別養子縁組」とは、子が実親と親子関係を断ち養親の実子となることです。

この制度は子どもの福祉を目的としてできたもので、様々な事情により実親が子を育てることができないため、その子を別の家庭で養育するものです。

原則として子は6歳未満、家庭裁判所の審判により成立します。

「普通養子縁組」とは、子が実親との関係を維持したまま養親の養子となることです。

この場合、子は実親との親子関係の、二重の親子関係を持つことになります。

養親と子どもの合意で成立し(15歳未満は法定代理人の同意が必要)、特別養子縁組に比べ、ハードルが低いものとなっています。

日本とアメリカの文化の違い

日本では、このような制度があるにもかかわらず、伝統的に「家制度」が重視されることもあって、里親や養子縁組がなかなか浸透しづらい状況になっています。

一方、アメリカの現状をみると、年間12万組の養子縁組が行われ、要保護児童の77%が新たな家庭を得ています。

この背景には、「親権はく奪」の仕組みがあると言われています。

アメリカでは児童虐待が疑われる場合、まずは警察によって子どもが保護され、一定期間家族機能を正常化するプログラムが適用され、状況が改善しない場合は、親の意図に関わらず、子供は親の手を離れ、養子縁組などの制度に組み込まれていくというものです。

このように、「養子縁組」という選択肢が一般化し、ごく当たり前のものとして受け入れられています。

国連で採択された子どもの権利条約では、「子どもが家庭で育つ権利」がうたわれており、温かい家庭で愛情を受けて育つ権利がすべての子どもにあります。

小さい時から思春期時代、そして成人した後も支え、見守られる健全な家庭環境を提供されることが望まれます。

 

  • この記事でのポイント

    ・「里親制度」は、育てられない親の代わりに一時的に家庭内で子供を預かって養育する制度。里親手当養育費が自治体から支給
    ・「養子縁組」が成立した家庭には、自治体などからの金銭的な支援はなし。
    ・「特別養子縁組」とは、子が実親と親子関係を断ち養親の実子となること。
    ・普通養子縁組」とは、子が実親との関係を維持したまま養親の養子となること。